季節のうつろいを感じ
その繊細な変化を写し取る酒
ひとつの田圃から生まれるひとつの酒
純米大吟醸らしい 芳醇な香りと甘みを求めて
山田錦は茨城県・石岡, 霞ヶ浦の畔にある廣瀬商店(白菊酒造)へ. 2010年発売以来, わたしたちの『一圃一酒』の取り組みに一番最初に協働してくださった心強いパートナー. 40%まで磨いた米と, 爽やかな吟醸香を生む茨城発祥の酵母を用いた芳醇な香味とキレを合わせもつ “純米大吟醸 SEN”. 毎年同じ水, 酵母を使用しても味が変わる繊細な酒づくりにおいて, 一つ一つの工程で杜氏が気候や酒米の具合を見極めながら丁寧につくっています.
伝統の生酛造りで 米の個性を引き出す純米酒
2018年より始まった『一圃一酒』の純米酒づくり. パートナーは酒米生産地・加西の純米蔵 富久錦. “純米 SEN” はこの地域で確立された自然の乳酸菌を手間暇かけて育て醸す伝統的な造りを用い, 酸味と米本来の旨みをじっくり引き出しています.
山田錦は米を磨く(精米)ほど雑味を抑え、透明感が増すことから半分以上の磨きが主流とされてきました. “純米 SEN” は低精白米の山田錦を使用し, 米の栽培方法や米のうまみをどう表現するか, 農家と杜氏の腕が試される日本酒です. 山田錦の可能性を広げる農家と酒蔵の挑戦は続いています.
PROFILE
廣瀬商店(旧:白菊酒造)
茨城県石岡市の酒蔵. 銘酒『白菊』醸造元. 酒造りに適した寒冷な土地と, 筑波山水系の良質な地下水に恵まれ, 永く210年に渡って地域に愛される日本酒を醸している. 創業210年の節目に海外での日本酒の嗜好調査を行いながら, 販路を開拓している. (撮影:本多康司)
PROFILE
富久錦
兵庫県加西市の酒蔵. 風土米(加西市の米のみ)を原料に, 純米酒だけを醸し, 地域の人に愛される蔵を目指している. 米づくりの環境も酒づくりの環境も毎年変化があるなか, それぞれの状況を診て, 目に見えない主役たちと対話した酒づくりを行なっている. (撮影:本多康司)
日本酒の装い
純米大吟醸SENのラベルは, 鉱物を砕いた雲母を用いて, 京都 唐紙師 かみ添の手によって一枚一枚刷毛染めされた白い “線” . 控えめな化粧(染め)が存在をより際立たせます. 光を受けやわらかに輝く静謐な刷毛目の表情をお楽しみください.
純米酒SENのラベルは, 同じくかみ添製作の “なぐり” の版木を染めた唐紙を米が溶ける醪(もろみ)に見立て, 息遣いを感じる表情を平版印刷で再現しています.
*刷毛染め:京都 唐紙工房 かみ添
*なぐり原画:京都 唐紙工房 かみ添
*純米/純米大吟醸[生]は唐紙を原画とし, 平版印刷しています.
日本酒の醸造から装いまで, 理想的なパートナーシップにより生まれたSENは, 霽れと褻どちらにも添う日本酒. 季節のごあいさつ, 特別な日の贈り物まで, 大切な場を静かに引き立てます.
PROFILE
嘉戸 浩 KADO ko (kamisoe)
唐紙師. 京都府生まれ. 京都嵯峨美術短期大学専攻科プロダクトデザイン学科卒業後, サンフランシスコ私立アカデミー総合芸術大学 グラフィックデザイン科へ入学. 同校卒業後ニューヨークへ移り, 雑誌社でインターンシップ, アートプロダクションを経験すると同時に, 幾つかのデザイン事務所でフリーランスデザイナーとして活動. 帰国後, 唐紙の老舗工房に入る. 2009年独立, 同年9月ショップ兼工房「かみ添」を職人の街京都西陣にオープン. (撮影:本多康司)
日本酒 SEN
一つの田圃から採れる酒米で
一つの日本酒をつくる
この十数年で酒米づくりから酒づくりまで一元で行う酒蔵が増え, 飲み手も蔵元の意図に関心を寄せ, 充実した日本酒の環境が多くの酒蔵の努力によって育まれてきたことを実感します. わたしたち酒米農家も自ら酒づくりに関わり, 飲み手に直接届ける活動を始めたのは2010年のこと.
一つの田圃から採れた酒米だけでつくる『一圃一酒』の酒づくりは, 蔵元との密な関係性を育みます. 互いの存在を確かめ合いながら協働する酒づくりによって『SEN』は生まれました. 対話を重ねる農家と酒蔵のものづくりは, 農法から醸造法, そして味わいに対して新たな挑戦を生み, 誇らしいお酒や産地を育てます.