杉玉づくり
農閑期の冬場になると山へ入り, 雑木の下刈りや杉の間伐など, 山の整備の際に出た杉の葉を杉玉に仕立て, 酒蔵に届けています.
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杉玉は, 芯材に杉の葉を放射状に差し込み, 丸く整形した球状の印(シルシ)です. 杉は昔から日本に広く生育し, 日本の “山の樹” として, また木材として日本人に一番身近で慣れ親しんできた日本固有の針葉樹です. また, 杉は神の依代(よりしろ)とされ, 日本の神事と深い関係のある樹でもあります. 元々神事から始まったとされる日本酒造りにおいて, 毎年酒造りの始まりに「安全に佳い酒ができるように」と願いを込めて醸造の場には杉玉が吊るされます. また酒ができた時には蔵の店先に青々とした杉玉を吊るすことで, 新酒のできあがりを示し, またその枯れ方で酒の熟成を表しました. 江戸の頃, 400年ほど前から今もつづく風習です.
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店の窓から見える景色は, この地域の特徴的な里山風景です. ため池, 小高い山に緩やかな段丘地形で, 60万年前, この辺り一帯は大きな湖でした. 波のない穏やかな湖, 落葉などの有機物と共にゆっくりとした水の浸食により粒子の細かい土が湖底に溜まり, 肥沃で粘土質な土壌を形成してきました. そんな土質を含めこの地域の風土は稲作の中でも特に酒米に適しており, 全国の醸造家に選ばれる酒米の産地になっています.
ため池が多いのもこの地の特徴です. 稲作にはたくさんの水が必要です. 近くに大きな河川が無く水の確保が困難なこの地域は, 高地にため池をつくり水を確保してきました. 幸い, 段丘地形で水持ちの良い土壌が, 池をつくるにも, 水路を通して低地の田に水を送っていくにも優位に働き, 水資源に乏しいこの地域での稲作を可能にしました. 先人が育んできた稲作の歴史と自然が味方する特別な土地ともいえます. ここで酒米を栽培できることに感謝しながら, 米づくりを行っています.
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美しく見える里山の景色も, ここ数十年で変化しています. たとえば, 日常的に山に人が入ることがなくなってきたことで, 竹や雑木の密生が進み, 里と山の境界が曖昧になり野生動物との棲み分けが難しくなっています. 山の保水力の低下にもつながり, 水資源や土砂災害への影響など, 課題が表面化してきています.
稲作を引き継ぎ, 里と山の行き来が増えていくと, 田や池や山などの自然は一連のものだと意識させられます. 米の収穫を終えて冬を迎えると山を繕います. 山を繕うことは, 平地で暮らす私たちの生活を守ることにも繋がります. 間伐した樹々を堆肥化して田圃に還元したり, 杉の葉で杉玉をつくることは, ひと連なりの自然の中に私たちの営みも含まれることを強く実感できる瞬間でもあります.
田と山と暮らしが近くにあるこの豊かな風土を, よいかたちで後世に引き継いでいけるよう, 皆さんと少しずつ共有できればと思います.
Sugidama Workshop 杉玉づくり体験会
山の間伐で出る杉の葉を使い, 日本酒のシンボル「杉玉」を作る体験会.
杉玉づくりは, 束ねた杉の葉を丸く刈り込む手仕事. ハサミを入れるたびに杉の葉の香りが弾けます. 杉が “神が宿る木” とされるのもうなずけるような, 清々しい芳香です.
完成した杉玉はお土産としてお持ち帰りいただき, ご自宅に飾って香りや色の変化を楽しむことができます.
酒米が育つ場所で, 日本酒と杉のつながりを紐解きながらの杉玉づくり体験, ぜひご体感ください.
[ 同日開催 ] しめ縄づくり体験会
自分で採集した材料でしめ縄を手作りする会も同じ日程で開催します.
その年に採れた稲わらを使い, ウラジロ, 南天, 橙などを飾るしめ縄.
飾りとなる材料を近くの山に採集しに行くところから始めます.
それぞれの意味を学びながら自分で作ったしめ縄で, 年神様をお迎えしましょう.